今や建物だけでなく街なかにも設置され、犯罪の抑止することにも大きく貢献している防犯カメラ。
しかし、個人で住宅などに設置する場合は、法律や設置基準についてしっかり理解しておかないと、法律違反を犯してしまう可能性があります。
そこで本記事では、防犯カメラを設置する際に知っておくべき法律や設置基準について、防犯カメラがもとでトラブルとなった実例と合わせてご紹介します。
防犯カメラの設置を検討している方は、ぜひご一読ください。
目次
防犯カメラ設置で注意すべき法律
防犯カメラを設置する際、知っておくべき法律はいくつかありますが、中でも意識しておきたいのは「個人情報保護法」です。
最近の防犯カメラは高性能で、高い防犯性が期待できます。
しかし、それは言い換えれば個人を特定しやすくなるということを意味します。
不要なトラブルを招かないためにも、個人情報保護法について知っておきましょう。
個人情報保護法
個人情報保護法は、2005年の4月に施行された法律です。
インターネットなどの普及によりさまざまな場面で個人情報が利用される中、個々の権利や利益が守られながら有効活用されることを目的として制定されました。
当初は5,000人分以上の個人情報を有している企業にのみ適用されていましたが、2017年の改正で人数制限が廃止されたため、例えば学校や習いごとの連絡網が廃止されるなど、小規模な集団においても個人の情報は開示しないことが原則となっています。
ちなみに個人情報とは、氏名や住所、電話番号をはじめ個人を特定できる可能性のある情報は全て含まれます。
つまり、防犯カメラで撮影された映像においても、顔や身体の特徴から個人が特定される可能性がある場合は「個人情報」に該当するのです。
ただし、そもそも防犯カメラの目的はトラブルがあった際に個人を特定することにあるため、防犯カメラを設置すること自体は個人情報法保護法違反にはあたりません。
しかし、映像の利用目的はあくまでも「防犯」であり、それ以外の目的で個人情報を利用してしまうと当然のことながら違法とみなされます。
個人情報保護法を違反した場合
「防犯」という明確な目的を持った上で防犯カメラを設置している場合は、たとえ個人の顔が特定できる状態であっても個人情報保護法違反には当たらないとされています。
ただし先に述べた通り、本来の目的から外れて個人情報を利用した場合は違法となります。
万が一、個人情報保護法に違反しているとみなされた場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金といった刑事罰が課されることがあるのです。
また、周知させずに無断で防犯カメラを設置するのもNGです。
「プライバシーの侵害だ」だと損害賠償を請求されるケースもあるため、防犯カメラを設置する際は細心の注意を払いましょう。
防犯カメラ設置の基準
防犯システムの1つとして採用されている防犯カメラですが、その設置基準は一律で定められているわけではなく、各自治体に委ねられています。
自治体ごとに防犯カメラの設置・運用についての条例やガイドラインが定められているので、まずは防犯カメラを設置するエリアに該当する自治体の公式ホームページなどで確認してみましょう。
以下に、多くの自治体で採用されている事項についてご紹介します。
- 目的を明確にし撮影範囲を最小限に抑えること
- 設置していることを分かりやすく周知すること
- 管理責任者を定めること
- データの保存期間は必要最低限とし厳重に保管すること
- 秘密を漏洩しないこと
- 目的外の利用や第三者への提供をしないこと
- 苦情や問い合わせに迅速に対応すること
また、上記に加え防犯カメラを適切に運用できるよう、管理規定の作成が求められるケースが多いようです。
防犯カメラを設置する目的や管理者、設置場所などに加え、その規定がいつから施行されるものなのかを明記するのがポイントです。
顔認証機能の防犯カメラは法律違反か?
結論から言うと、顔認証機能の付いた防犯カメラを設置しても法律違反にはなりません。
顔認証機能付き防犯カメラとは、AIによる顔認証システムを搭載したカメラのことです。
あらかじめ登録されたデータベースを基に、画面に映る人物の顔と照合することで、不審者の侵入や犯罪を未然に防ぐことができ、すでに多くのオフィスや商業施設で活用されています。
ただし、顔認証機能が付いた防犯カメラについては賛否両論あるのが現状です。
許可なく顔を撮影されることに対しプライバシーの侵害だと感じる人も多く、実際に過去には顔認証機能付き防犯カメラを巡るトラブルも発生しています。
設置自体は違法ではありませんが、従来以上に防犯の目的で顔認証を行っていることを周知させておく必要があります。
関連記事>>防犯カメラの顔認証システムとは?
法律を遵守し防犯カメラ設置するために
防犯カメラは誰でも設置が可能ですが、適切に運用するためには個人情報保護法をはじめ防犯カメラに関係する法律を理解しておく必要があります。
トラブルを避けるためにも、次のようなポイントに注目しましょう。
防犯カメラ設置業者に相談する
とくに初めて防犯カメラを設置する場合は、防犯カメラの設置件数の多い専門業者に相談するのがおすすめです。
防犯カメラのエキスパートであれば、法律について熟知しているだけでなく、設置場所や角度など防犯カメラの効果を最大限引き出すノウハウまであらゆるアドバイスが受けられます。
また、希望に合った機種の紹介や防犯カメラの設置をお願いすることもできるため、まずは防犯カメラ設置業者に相談してみましょう。
関連記事>>マンションに防犯カメラを設置できるのか?おすすめの設置場所
防犯カメラが法律的問題になった事例を把握する
過去に、防犯カメラを巡って起きた法律に関するトラブルを知っておくことも有効です。
中には長期的な裁判に至ったケースもあり、そういった事例を事前に知っておくことで、自身に起こらないようにあらかじめ対策を練っておくことができます。
過去の事例をよく把握し、同じ状況になる可能性はないか、個人情報保護法に触れていないかなどを確認しておきましょう。
防犯カメラ設置が問題となった実例
ここでは、過去に防犯カメラが元でトラブルになった実例についてご紹介します。
防犯カメラの設置を検討している方は、これらに該当している部分がないかよく確認しておくことが大切です。
事例①マンションの共用部分への防犯カメラ設置
マンションの管理人は、不審者の侵入や犯罪を抑止する目的で、ロビーなど建物の共用部分にあたるスペース4ヶ所に防犯カメラを取り付けました。
しかし、中には個人の部屋番号や郵便ポストの暗証番号が映り込んでしまう位置に設置された防犯カメラがあり、マンションの住人からプライバシーの侵害ではないのか、という問い合わせがありました。
問い合わせに対して管理人は防犯や住人の安全管理が目的であること、防犯カメラの角度を調整することを説明し、トラブルは一旦は収まったようにみえました。
しかし、後日他の住人から防犯カメラの撤去とプライバシーを侵害されたことに対する損害賠償の請求があり、裁判へと発展してしまったのです。
最終的に、管理人は裁判所の命令により該当する監視カメラの撤去と損害賠償の支払いを行うことになりました。
このことから、たとえマンションを管理する立場であり、意図的ではないにしても、部屋番号や暗証番号など個人に関わる情報を得てしまう状況にあっては、裁判所からすると個人情報保護法違反とみなされるケースがあるということが分かります。
事例②書店における顔認証システム
誰もが知る大手書店のジュンク堂では、ある店舗で万引きの件数が非常に多く、店長をはじめスタッフも頭を悩ませていました。
そこで導入されたのが、AIによる顔認証ができる防犯カメラです。
店頭に設置した顔認証機能が付いた防犯カメラには、あらかじめ過去に万引きを行った人や、その可能性が考えられる人の情報がデータベースに組み込まれており、該当する人物が入店した時点で、リアルタイムで警備員やスタッフに通知が来る仕組みになっていました。
この時、店頭には「防犯カメラ作動中」と張り紙がされていたものの、来店者は新たに顔認証システムを導入し、個々の顔を撮影しているということまでは知らされていませんでした。
そのため、その顔認証システムがニュースで取り上げられた際に「プライバシーの侵害だ」といった意見が多く出たのです。
確かに、自分の知らないうちに勝手に顔写真を撮影されるのは、誰しもいい気分ではありません。
もちろん、来店者全員の顔写真をデータベースに保存しているわけではありませんが、反対意見が出ることにも頷けます。
この件に関しては、結果的に違法とみなされることはありませんでしたが、やはり万引きの被害を含め事情を周知させておくべきだったと言えるでしょう。
事例③防犯カメラを設置したことによる隣人トラブル
住宅街で、ある夫婦の自宅がいたずら被害にあったことを理由に、隣家との間に防犯カメラを設置しました。
その防犯カメラは、隣家の住人が玄関から道路に出る際に必ず利用する通路に位置しています。
防犯カメラは通路だけでなく、隣家との間にあるゴミ集積場や隣家の軒下、駐車場など広い範囲を撮影できる形で設置されており、それに気付いた隣人がプライバシーを侵害されたと訴えたことによりトラブルが発生しました。
隣家の住人は、プライバシーの侵害だけでなく、転居を余儀なくされたと訴え、転居費用や慰謝料合わせて約52万円を請求する訴訟を提訴したのです。
これに対し、夫婦は防犯カメラを設置した目的やその必要性を主張しました。
確かに、設置された防犯カメラは常時上書きされていくタイプのものである上、特定の人を追跡する機能も付随しておらず、あくまでも防犯目的で設置されたことは明らかでした。
それらを考慮した上で、一審では隣家の住人の訴えは棄却されました。
ところが、隣家の住人は不服として控訴したため、さらに裁判が継続されることになったのです。
裁判は数年にわたり、結果として夫婦が損害賠償を支払うことにはなりませんでしたが、かなりの精神的苦痛を伴ったことが想像できます。
事例④建設現場における防犯カメラの設置
名古屋市でマンション建設を予定していた土地に、建設会社が計10台の監視カメラを設置したことでトラブルが発生しました。
建設会社側からすれば、工事をしていない時間帯に建築資材が盗まれてしまうのを懸念した結果「念には念を」という考えで10台もの防犯カメラを設置したのでしょう。
しかし、これに対して近隣住民が「個人が住居に出入りする様子などを撮影するのはプライバシーの侵害だ」「建設反対運動を行う自由が侵害された」などとして、建設会社と不動産会社に対して400万円の損害賠償を求めたのです。
裁判では、設置された10台の防犯カメラのうち、撮影機能のないダミーの防犯カメラ1台について「住民への嫌がらせ的な意図の疑いがある」として、住民1人につき5万円の支払いが命じられました。
この件については、もともと地元住民による反対運動が起こっていたという背景がありますが、順調に進んでいる案件も防犯カメラ1つでトラブルに発展することがあるため注意が必要です。
法律をしっかりと理解して適切な設置・運用をしよう
いかがだったでしょうか。
この記事を読んでいただくことで、防犯カメラに関係する法律や設置基準、実際にあったトラブルなどについてご理解いただけたと思います。
犯罪を抑止する効果が期待できる防犯カメラですが、目的が曖昧であったり、過剰設置とみなされたりした場合は、違法として罰則を受ける可能性があります。
とくに個人情報保護法については内容をよく理解し、後々トラブルが発生しないように事前に対策をしておくことが大切です。
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